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絶対あいつは焼き鳥に
クラリスをチラリと盗み見ると、俺が言った恥ずかしい台詞はなかったかのように、気が抜けるほどの……普通。
顔を赤らめるでもなし……心配そうに俺を見ているだけだ。
えっと……それはそれで……どうなんだろうな。
少しは照れるなり、なんなりしてもいいとは思うんだけど。
まぁ、クラリスの鈍感さは、今に始まったことじゃないので置いとくとして……俺は怒りの込めた目をぴーに向けたが、クラリスからは顔が見えない事をいいことに、してやったりと得意満面なぴー。
おっまえ、本当に腹立つ奴だな。
「アルベルト様!? 大丈夫ですか?」
「あ、ああ」
いや、痛いよ? 猛スピードで突撃されたし。でも、痛いなんて言ったら、ぴーに馬鹿にされるからな。
「アルベルト様、頬を見せてください……少し赤くなってますね……大丈夫ですか? 今、回復魔法を……」
クラリスは右手で俺の頬に触れ、回復魔法を放つ。
えっ……
俺は痛みより、クラリスの手の温かさと柔らかさの方が気になってしまい、顔がどんどん赤くなっていくのが自分でもわかる。クラリスはそんな俺を見て、困った顔をした。
「大変です! 赤みが顔全体に広がってます。どうしましょう……痛みは大丈夫ですか? 私の回復魔法じゃ駄目なのかしら……ザラ様に……」
「いやいや、ホント、大丈夫だから!」
ザラを呼びに行こうとしたクラリスの腕を掴み、慌てて止める。
ザラまで来られたら、たまったもんじゃない!
それに……なんていうか……クラリスの鈍感パワーは相変わらず絶好調。なんだか……ホッとする。
クラリスは迷いながらも、頬の赤みがなくなったのを確認し、安堵の表情を見せた。そして、肩にとまっているぴーに優しく語りかける。
「ぴーちゃん、私を助けようとしてくれたのは嬉しいけど、むやみやたらに突撃しちゃ駄目よ? もしかして、怖い人かもしれないでしょ? ぴーちゃんが怪我したら、私、悲しいわ」
「ゴメンナサイ」
「でも、助けてくれようとしたのね。ありがとう」
クラリス、違うぞ。騙されるな!
ぴーは、悪意ありありで俺に突撃したんだぞ。それに、あのザラが作っただけあって、魔法も多少使えるし、ぴーはそこそこ強いんだぞ?
「ぴーちゃん、間違っちゃったとはいえ、アルベルト様にごめんなさいしましょうね」
「ウン。ボク、ゴメンナサイスルゥ」
目をキラキラさせ、クラリスを見上げるぴーに「いい子ねー」と微笑むクラリス。
なにカワイコぶってるんだよ!
クラリスも甘やかしすぎだからなっ。
ぴーがパタパタ飛んできて、俺の肩にとまる。
「ゴメンナサイ」
「アルベルト様、私からも謝ります。ごめんなさい」
クラリスが俺にむかって頭を下げたのを見て、うっ……と言葉に詰まってしまう。
真相を知っている俺としては、ぴーに文句を言いたいところだが、小鳥相手に怒れば、器の小さい男になっちまうし……ぴーは書庫の件も知ってるからなぁ……読んでないのに、読んだことになってるのが悔しいが。
「あ、ああ、大丈夫だ」
「良かったわね。ぴーちゃん」
「ウン!」
嬉しそうなクラリスにかわいい声でぴーはさえずる。
ホント、声だけはかわいいよな。声だけは。
俺の思考を察したのか、肩の上にとまっていたぴーは鋭く足の爪を立てた。
いてーよ!! おい!
そして、クラリスがよそ見をしているすきに、俺の耳元で低く低く小さくさえずる。
「ケッ……」
俺は決めた。
絶対に焼き鳥にしてやる……と。
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