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作りすぎじゃないですか?
「なにしてんの? アルベルト?」
クラリスの義弟のミカエル・アルフォントがつっぷしている俺に呆れた口調で問いかける。
「お前、チョコレート、あまり好きじゃないだろ?」
シトリン家次期当主、策略家のジェスター・シトリンがチョコレートをチラッと見て、余計な事を口にする。
2人とも、俺の大事な親友でもあり、子供の頃からの厄介な恋敵だ。
クラリスとも仲のいい2人は、俺とクラリスが恋仲になった今も、まったく諦める気配がない。
おかしいだろ。お前ら、諦め悪すぎだぞ。
「あ、ジェスター様、ミカエル、ちょうど良かったわ」
えっ? ちょうどいいの? クラリス、こいつら邪魔しに来たんだぞ?
ほんの数分前まで、いい雰囲気でキスする寸前だったはずのクラリスは、もう普段通りの顔になり……切り替え早くない?
「2人にもあるんですよ! チョコレート」
クラリスが笑顔でジェスターとミカエルに俺と同じ箱を渡す……俺はそれを横目でジトッと見てしまう。
えええ…………俺だけじゃないのかよぉぉ。
「あ、ありがとう。クラリス」
「義姉さま、ありがとう!」
「2人の分も持ち歩いていて良かったわ」
ジェスターは顔を赤らめて嬉しそうに受け取り、ミカエルは満面の笑みを浮かべ、チョコレートの箱を抱きしめる。
お前ら、俺の婚約者だぞ?
ジェスター、なに照れてるんだよ!
ミカエル、喜びすぎだろ!
「もしかして……エドワードとザラの分も?」
俺は恐る恐る聞いてみる。
クラリスはにっこりと笑顔を見せ、あっけらかんと明るく答えた。
「はい!」
俺……撃沈。
片手で額を押さえ、切ない気分で床を見つめる。
クラリス、どれだけ作りすぎたんだ……
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