やっぱりあいつは焼き鳥に

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やっぱりあいつは焼き鳥に

「クラリス、ボクニハ?」  いつの間に帰ってきていたのか、ぴーがひょこっと顔を出す。  お前もいたのかぁぁ!  お前達、俺の部屋に勝手に入りすぎだぞ。  ナクサスが入れているんだろうけど……ナクサスめっ。 「あ、ぴーちゃん。連絡してくれてありがとう」 「アノネ、エドワードサマ、ト、ザラサマネ、チョコ、タノシミダッテ。ハヤクキナサイッテ」  えっ! あの2人は知ってたのか? クラリスがチョコレートを持ってくること。だから「クラリスが心配する」って言ってたのか? いや、だったらさぁ、落とし穴に2回も落とすなよぉ。 「クラリス、ボクモホシイ」  クラリスはウーンと考える。俺はぴーに「わがまま言うな」と注意したが、無視された……  みんな、知ってるか? 俺、この国の王子。王位継承権第二位の王族の中でもトップクラスの立場。皆さん、俺に対する扱いがほんの少々雑だと感じるのですが。 「ぴーちゃんは、魔法で出来てるから何も食べないのよね……」 「ボク、ナカマハズレ?」 「あ、私のリボンあげる。半分に切ってお揃いにしましょ?」  クラリスは髪をまとめていたオレンジのリボンをほどき、長い髪をハラリとおろす。頭を左右に軽く振り、ぴーにリボンを見せ「きれいでしょ?お気に入りなの」と笑いかけた。  その動作にドキリとした俺は……いや、俺達は……顔を赤くし、それぞれがあらぬ方向を見ては言葉が出てこない。  なんていうか……ちょっと色っぽかったっていうか……ええいっ……俺はいいけど、お前達は何想像してるんだよ!  クラリスが鼻歌を口ずさみながら「ハサミ、ハサミっと」と気を取られているすきに、ぴーは目の前に飛んできて、声高にさえずる。 「エロトリオォォ」  俺達は慌てて、ドンッと机を叩いたり「あのさー」と無駄に大声を出したりと、ぴーのさえずりを打ち消した。  クラリスがいる時にエロって言うなぁぁ。  3人で憎々しげな視線をぴーに投げつけたが、ぴーは勝ち誇った目をする。鳥なのに! だ。 「はい。ぴーちゃん」 「ワーイ、クラリストオソロイーー! ボク、クラリスト、ナカヨシーー」  カットしてもらったオレンジのリボンをくちばしに(くわ)え、嬉しそうに部屋中をパタパタ飛び回っていた。  はしゃぐなっ! ちくしょー、鳥にヤキモチなんて、我ながら情けないが……ちくしょー  一通りはしゃぎ終わったぴーは、クラリスの肩にとまり、喜々とした声で爆弾発言を投下する。 「クラリスガ、マンガイチ、ケッコンシテモ、ボクハ、ツイテイクノォ」 「ぶふぉっ」  俺はイライラを抑える為、お茶を1杯飲もうとカップに口をつけた瞬間のぴーのさえずりに思わず、お茶を噴き出しそうになる。  は? なに言ってるんだよ?  ついてくるなっっ!   それにクラリスとの結婚は、万が一じゃなく、決定事項だ!  ぴーの言葉に賛成なのか、横からパチパチパチとミカエルとジェスターが拍手をしていた。  こっのぉ、裏切り者! 「ズットイッショー! マイニチ、イッショニネテネ、クラリスヲ、ワルイヤツカラマモルノォォ」  ぴーは高らかとさえずると、俺と目を合わせフッと笑う。何度も言うが、鳥なのに! だ。 「まぁ、嬉しいわ。ぴーちゃんは立派な騎士(ナイト)ね」 「ウン、ボク、クラリスノ、ナイト」  はぁぁぁぁぁ!?  いやいや、クラリス、微笑ましく話してるけど……俺と結婚してから、四六時中、ぴーが一緒って…………よ、夜も……だぞ?  だいたい、あいつが言う悪い奴って、俺……だよな。きっと……たぶん……間違いなく。  ミカエルとジェスターの拍手喝采が聞こえるが、もう俺には、なにか言う気力も残ってない  本当に勘弁してくれ……  俺の結婚生活に暗雲が垂れ込める。  ぴーがいるとまともな結婚生活が送れない事がよぉぉくわかった。これは由々(ゆゆ)しき大問題。  やっぱりあいつは焼き鳥にせねばっ!!
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