42人が本棚に入れています
本棚に追加
やっぱりあいつは焼き鳥に
「クラリス、ボクニハ?」
いつの間に帰ってきていたのか、ぴーがひょこっと顔を出す。
お前もいたのかぁぁ!
お前達、俺の部屋に勝手に入りすぎだぞ。
ナクサスが入れているんだろうけど……ナクサスめっ。
「あ、ぴーちゃん。連絡してくれてありがとう」
「アノネ、エドワードサマ、ト、ザラサマネ、チョコ、タノシミダッテ。ハヤクキナサイッテ」
えっ! あの2人は知ってたのか? クラリスがチョコレートを持ってくること。だから「クラリスが心配する」って言ってたのか? いや、だったらさぁ、落とし穴に2回も落とすなよぉ。
「クラリス、ボクモホシイ」
クラリスはウーンと考える。俺はぴーに「わがまま言うな」と注意したが、無視された……
みんな、知ってるか? 俺、この国の王子。王位継承権第二位の王族の中でもトップクラスの立場。皆さん、俺に対する扱いがほんの少々雑だと感じるのですが。
「ぴーちゃんは、魔法で出来てるから何も食べないのよね……」
「ボク、ナカマハズレ?」
「あ、私のリボンあげる。半分に切ってお揃いにしましょ?」
クラリスは髪をまとめていたオレンジのリボンをほどき、長い髪をハラリとおろす。頭を左右に軽く振り、ぴーにリボンを見せ「きれいでしょ?お気に入りなの」と笑いかけた。
その動作にドキリとした俺は……いや、俺達は……顔を赤くし、それぞれがあらぬ方向を見ては言葉が出てこない。
なんていうか……ちょっと色っぽかったっていうか……ええいっ……俺はいいけど、お前達は何想像してるんだよ!
クラリスが鼻歌を口ずさみながら「ハサミ、ハサミっと」と気を取られているすきに、ぴーは目の前に飛んできて、声高にさえずる。
「エロトリオォォ」
俺達は慌てて、ドンッと机を叩いたり「あのさー」と無駄に大声を出したりと、ぴーのさえずりを打ち消した。
クラリスがいる時にエロって言うなぁぁ。
3人で憎々しげな視線をぴーに投げつけたが、ぴーは勝ち誇った目をする。鳥なのに! だ。
「はい。ぴーちゃん」
「ワーイ、クラリストオソロイーー! ボク、クラリスト、ナカヨシーー」
カットしてもらったオレンジのリボンをくちばしに咥え、嬉しそうに部屋中をパタパタ飛び回っていた。
はしゃぐなっ! ちくしょー、鳥にヤキモチなんて、我ながら情けないが……ちくしょー
一通りはしゃぎ終わったぴーは、クラリスの肩にとまり、喜々とした声で爆弾発言を投下する。
「クラリスガ、マンガイチ、ケッコンシテモ、ボクハ、ツイテイクノォ」
「ぶふぉっ」
俺はイライラを抑える為、お茶を1杯飲もうとカップに口をつけた瞬間のぴーのさえずりに思わず、お茶を噴き出しそうになる。
は? なに言ってるんだよ?
ついてくるなっっ!
それにクラリスとの結婚は、万が一じゃなく、決定事項だ!
ぴーの言葉に賛成なのか、横からパチパチパチとミカエルとジェスターが拍手をしていた。
こっのぉ、裏切り者!
「ズットイッショー! マイニチ、イッショニネテネ、クラリスヲ、ワルイヤツカラマモルノォォ」
ぴーは高らかとさえずると、俺と目を合わせフッと笑う。何度も言うが、鳥なのに! だ。
「まぁ、嬉しいわ。ぴーちゃんは立派な騎士ね」
「ウン、ボク、クラリスノ、ナイト」
はぁぁぁぁぁ!?
いやいや、クラリス、微笑ましく話してるけど……俺と結婚してから、四六時中、ぴーが一緒って…………よ、夜も……だぞ?
だいたい、あいつが言う悪い奴って、俺……だよな。きっと……たぶん……間違いなく。
ミカエルとジェスターの拍手喝采が聞こえるが、もう俺には、なにか言う気力も残ってない
本当に勘弁してくれ……
俺の結婚生活に暗雲が垂れ込める。
ぴーがいるとまともな結婚生活が送れない事がよぉぉくわかった。これは由々しき大問題。
やっぱりあいつは焼き鳥にせねばっ!!
最初のコメントを投稿しよう!