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俺の苦労はまだまだ続く……のか!?
俺達4人はとりあえず座り、お茶を飲む事にした。いつものメンバーによる、いつものお茶会が急遽開催されたのだが……
おかしい……クラリスとの2人きりの甘い時間だったはずなのに、気がついたら4人と1羽の大所帯になっている……
ジェスターとミカエルは、クラリスから貰ったチョコレートを嬉しそうに開けていた。
2人の箱の中身も俺と同じように、まん丸のかわいいチョコが並んでいて……まったく同じか……なんか、ショックだな。
「義姉さま、美味しそうだね」
「クラリスは昔からお菓子作りが上手だな」
「えへへ、ちょっとだけ甘さを控えめにしました。ぜひ食べてくださいね」
クラリスは無邪気に笑いかけ、2人は紅茶を一口飲むと、チョコレートをつまみ、口に入れ「美味しい!!」と頬を緩める。
「残りは屋敷に戻ってから大事にいただくよ」
「僕も! 義姉さま、後で一緒に食べよう」
大事そうに箱を両手で持ち、感無量な様子でチョコレートを眺める。
……
……
……ちょっとまてぇぇぇい。
なにお前ら、幸せに浸ってるんだよ。
婚約者の存在、無視するな。
俺がブスッとしながらも、チョコレートを貰ったのはお前達だけじゃない! とアピールする為、口を挟む。
「クラリスの手作りは美味しいからな。特にハートのチョコレートが……」
ガタンッ
俺の言葉を遮るように、いきなり立ち上がったクラリスに俺は驚き、見上げると、クラリスはカッと顔を赤くした。
「そ、そろそろ……エドワード様とザラ様のところへ行ってきますね!」
赤くなった頬を両手で押さえ、俺の返答も聞かずにそそくさと部屋を出ていく。
「クラリスーーーボクモイクーー」
ぴーが慌ててクラリスの後を追い、俺達3人は呆気に取られていた。
へ? クラリス?
俺、なんかまずい事でも言ったか?
ジェスターのコホンと咳払いをした声に、我に返り、ジェスターとミカエルが「お前なんかしたのか?」と言いたげな目つきで俺を見ているのに気づく。
本当に何もしてないってば!
「アルベルト、ハートのチョコレートってなんだよ?」
「あ、ああ」
ジェスターに問われ、俺は説明すべく、ジェスターが貰ったチョコレートを指差す。
「ほら、このど真ん中の……」
俺の指差した先にあるのは、かわいいまん丸のチョコレート。
あれ?
何度見ても、まん丸のチョコレートしか並んでいない。
こいつ等のチョコレートにはハートの形がない?
あのチョコレートって……俺だけ?
俺にだけに入っていたハートのチョコレートにクラリスの真意を感じ、俺の顔が火照る。
そ、そっか……
えっと……これは……俺は特別ってことなのか……?
俺は嬉しい気持ちが隠しきれず、自然と口角が上がってしまった口元を右手で隠しながら、2人から視線を外した。
「おい、アルベルト!」
「いや、勘違いだったみたいだ」
赤くなったであろう顔を見られたくなくて、2人の目から逃げるように、立ち上がり、窓から外を眺めている振りをする。
勘のいい2人だ。挙動不審な俺の行動に「勘違い」で誤魔化されないとは思うけど。
俺にだけ、こっそりハートのチョコレートを入れていたクラリスが愛おしくてたまらない。
胸が熱くなる。
どんなに邪魔をされても、どんなに難易度が高いダンジョンでも、ぴーに「エロアホオウジ」と呼ばれても、絶対諦めない。クラリスの願いは叶えるからな。
エドワードとザラに認めさせ、心からの祝福をお前にプレゼントするぞ。
窓に映った自分の姿を見つめ、改めて強く心に誓う。
そんな俺の様子をじっと見て、これ以上、俺に聞いても無駄だと思ったのか、ミカエルが立ち上がった。
「僕も義姉さまのところに行こう。なんだかアルベルトひとりの世界に入っちゃてるしさぁ」
「そうだな。エドワード先生とザラ先生のところっていうのも気になるしな」
2人が部屋から出ていこうとするので「いやいや、俺も行くってば」と背中を追いかけ、部屋を一歩でた……
ハイ。本日、3回目の落とし穴にはまりました。
あーあ……
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