俺は毎日ダンジョンに挑む

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 事の始まりは4ヶ月前。  タンザ王国の第2王子である、俺、アルベルト・パライドル・タンザはやっとの思いで長年の片思いが成就し、幸せの絶頂にいた。  俺がずっと想い続けていた、クラリス・アルフォント公爵令嬢は恋敵(ライバル)も多く、邪魔をされたり、邪魔したり……本当にやきもきしていたが、でも何が1番辛かったか?と聞かれたら、俺は即答する。クラリスの国宝級の鈍感パワーだ……と。  魔道士となったクラリスと王家の特権で婚約をとりつけ、これでめでたくハッピーエンド……にならないのがクラリスである。  クラリスは俺の手を取り、にっこり笑う。 「婚約ぶっ壊しましょう!」  俺の気持ちもなんのその、アピールしても全く気づかず、声高らかに「目指せ!婚約破棄!アルベルト様に自由と平和を!」って、なんでそうなる?   そんな状況からの、やっと、やっとの両想い。これで本当のハッピーエンド……にならないのが俺である。  なぜか、クラリスを特別かわいがっている王宮騎士エドワード・ブライトンと王宮魔道士長ザラ・ブライトン。  我が国攻防のツートップ。  剣のエドワードに魔法のザラ。  俺の師でもあるこの2人は、巷で「鉄壁のブライトン兄弟」との異名を持つ。  この2人のクラリスのかわいがり方は本当の妹のよう……なんて言葉は通り越し、超溺愛していると言っても過言ではない。クラリスに害を及ぼそうものなら、国を滅亡させることも厭わない……そして、実際それだけの実力があるのが、この2人の怖いところだ。    そんな2人が、クラリスと婚約し、結婚の話もでてきた俺をほっとくわけがなく、王宮を俺専用のダンジョンにしてしまった……我が国最強の2人の力作。そりゃあもう、そんじゃそこらのお遊びダンジョンとは大違い……俺を始末する気満々だ。  罠は俺にしか反応しない。世界広しといえども、専用ダンジョンを持っている王子は俺だけなんじゃないかな……いらないけど。  もちろん、国王である父上に訴えたが、ザラに先回りされ「魔法の鍛錬の一環なんじゃろ?」と取り合ってもらえない。いや、父上、そんな呑気な……俺、いつか死にますよ?  おかげで毎日が命懸けである。  正直、俺はこのダンジョンから解放される(すべ)を知っていた。  一言、たった一言、宣言すればいいだけだ。 「クラリスとは結婚しない」  と。  そんな台詞は天地がひっくり返っても俺は言わない。言うわけがない。考えたくもない。  クラリスは、やっと思いが叶った、俺の大事な大事な女性(ひと)なのだから。  だから俺は今日も挑む。  毎日毎日、ダンジョンを攻略し続け、俺を認めさせてやる。クラリスの結婚相手として。  だが、攻略しながら、疑問に思う事もある。  なんで、俺は恋しただけなのにダンジョン攻略してるんだ?  …………謎だ。
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