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大事な事は早く言ってください
小鳥は俺の肩にちょこんと止まると、かわいい声でさえずり始める。
「エロアホオウジ、クラリスニ、ホウコクスルゥ」
「お、おい、まて。俺は何もしてないぞ! それに『アホ』だけじゃなく『エロ』まで王子の前につけるなっ」
「エロイコト、カンガエテタ。クラリスニ、オシエテアゲルゥ」
「まて、まて、ちょっとだけだぞ? ちょっとだけ! 男なんだからそれくらいいいだろう!」
「ボク、ワカンナーイ。クラリスニ、キイテミルゥ」
「や、やめろぉぉーー」
俺は力いっぱい止めるも、小鳥は知らないふりを決め込む。
く、くそぅ。仕方あるまい……こうなったら、コイツの口を封じる為、焼き鳥にするしか……
突然現れたこの小鳥は、ザラがクラリスとの連絡用に魔法で作り出した鳥で「ぴー」とクラリスが名付けた。
クラリスやザラ、エドワードには従順なんだが、まー俺には口が悪いのなんのって……ザラそっくり。いや、クラリスの前では良い子ぶってる分、ザラよりたちが悪い。
クラリスはコイツの本性を知らないから「ぴーちゃん」なんて呼んで、かわいがっている。それをいい事にクラリスにベタベタ甘えては、俺の方をむいてニヤリと笑う。鳥なのに、だ!
「イマ、ボクノコト、ヤコウトシタデショ」
チッ……気づかれたか……
「クラリス、エロアホオウジト、ケッコンナンテ、ダメ、ゼッタイ」
不審そうな目つきで俺を見ながら、不愉快な言葉をさえずる。
余計なお世話だっ!
あと、エロはやめろ。エロは!
『なにぴーと遊んでいるのですか……早く、書庫を出ないと爆発しますよ?』
伝心魔法でザラの声が直接聞こえ、俺はぴーから視線を外す…………えっ? バクハツ?
………………ばくはつぅぅ!?
「ば、爆発って、そういうことは早く言ってください!!」
『早く書庫から出なさい。ああ、アホ王子が失敗したら、ぴーは転移魔法を使いなさい』
「ハーイ、ザラサマ」
俺の心配はっ!?
『あと10分ですよ』
「10分!?」
おい、おい、おい……勘弁してくれ。
俺は急いで集めた本を並べる。
「月女神がタンザに降りた伝承」
「ナース大国滅亡手記」
「んぱか族の歴史」
「神殿系図」
「けだるげな王」
「いい王子の育て方」
「こどもの作り方」
えっと……頭文字っと……「つ」「な」「ん」「し」「け」「い」「こ」
つなんしけいこ? 意味わからん。
「ツナンシケイコ……」
なんとなくボソリと口にしてしまい、しまった!っと咄嗟に思うが、もう遅い。扉に描かれていた魔法陣が赤く光り、数本の鋭利な氷柱が俺をめがけて飛んできた。俺は慌ててシールドを張ったが、1本だけシールドをすり抜け、俺の喉元をかすめる……
俺、死ぬよ? 本当に死んじゃうよ?
『ああ、言い忘れましたが、呪文を間違えると氷柱が飛んできますから』
早く言えぇぇぇぇ!!
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