謎は解いたが……暇なんですか?

1/1
前へ
/21ページ
次へ

謎は解いたが……暇なんですか?

「つ」「な」「ん」「し」「け」「い」「こ」  並び替えて、台詞を作る……と。  えっ……と……わからん。全くわからん。  俺がウンウン唸りながら考えていると、肩の上でぴーがさえずる。 「コンナ、カンタンナノモ、ワカンナイノォ。ヤッパリ、エロアホオウジト、ケッコンシチャダメェ」 「うるさいぞ、ぴー! 時間がないんだ。黙ってろ」 「ケッコンハンタイ! ケッコンハンタイ! ケッコンハンタイ!」 「だから、うるさいって……ん? ケッコン?」  ちょうど「け」「つ」「こ」「ん」の文字はあるな……残りは「な」「し」「い」  ……  ……  ……はぁぁぁぁ。  俺は台詞を頭の中で完成させると、あまりのアホらしさに溜息をついた。  ……こんな台詞を俺に言わせる為にわざわざ本を集めて、呪文作ったのかよ……我が国の魔道士長、暇なの? 『暇なわけないでしょう。超超多忙です。私の仕事を増やさないで下さい』  げげっ……また、聞かれてた……って、コレ、仕事じゃ無いだろっ! 『時間、ありませんよ』 「はぁ」  俺は扉を開ける呪文を……クッソー、言いたくない。言いたくないけど、言わないと書庫から出られない。ちっくしょー  あくまで、この台詞は呪文だ。俺の意思とは全く無関係だからな。  俺は自分に言い聞かせ、意を決して、呪文を声に乗せた。 「クラリストハ」 「けっこんしない」  こ、こらっ! ぴー、なんで「クラリスとは」なんて前置きをつけるんだよ! 勝手に台詞を足すなっ。呪文は「けっこんしない」だけだろう!  呪文に反応して、扉の魔法陣が青白く光り「カチャ」と鍵が開く音がした。  俺はやっと書庫から脱出し、爆発は免れたが……色々と精神的ダメージが大きすぎ、その場にしゃがみ込む。  ある意味、体力、魔力勝負のダンジョンの方が楽かも……心が削られまくる。 「『クラリストハケッコンシナイ』ゲンチトッタァァ」  ぴーは嬉しそうにくるくる飛び回り、俺の疲弊した心に追い討ちをかける。  なにが「言質(げんち)とったー」だ。  お前が勝手に「クラリスとは」って足したんじゃないかっ。 「お前……勝手に……足すな……」  精神的に疲れ切った俺は、ぴーに文句を言うも、声に力が入らず、言葉がはっきり出てこない。 「キコエナーイ」  肩にとまったぴーから小憎たらしいさえずりが聞こえ、俺は小さく息を吐いた……
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加