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その事実は、その先輩の口から私に知らされた。
「純平、あなたじゃ物足りないんだって」と言われた時、私の目の前は真っ暗になった。大好きな純平と笑えて過ごせることで、明るかった世界が暗闇になった。
あの時は全てがどうでもよくなって、自分が何をしているのか全然分からなかった。息をすることでさえも、苦しかった。
その頃から友だちだった史華が私を支えてくれた。
あれからずっと恋すること、出来なかった。しようとも、思わなかった。
「姉ちゃん? 姉ちゃん! おーい、姉ちゃん」
「美琴? 幸哉くんが呼んでいるよ」
「わわっ、ごめんなさい! 幸哉、なに?」
いけない、心ここにあらず状態だった……。
「さっきの男ことなんか、もう忘れなよ」
「うん、そうだよね」
「で、父さんなんだけどさ。泰士さんには父さんが楽しみにしてると言ったんだけど、実は違うんだ」
「違うの? あのお父さんが楽しみにしてるなんて、信じられないと思ってはいたけど」
「うん、ごめん」
幸哉は私たちを安心させるために楽しみにしていると嘘を言ったらしい。
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