出逢い

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出逢い

その時、私は途方に暮れていた。 ベンチに座って、ぼんやりと人の流れを見ていた。右に左と、人はいろんな方向に歩いていく。ただ眺めているだけだから、どんな顔の人が歩いているのか認識はしていない。 「この時間にこの人を見ませんでしたか?」と刑事とかに写真を見せられたとしたら、「分かりません」としか答えられない程度。 だけど、ぼんやりしている私の脳内に一人の人が認識された。 その人は、放つオーラが周囲と違い、浮かび上がっている感じだった。 身長は180センチを超えているようで、他の人よりも頭がぴょこと飛び出していた。だから、目立つのだろうけど、それだけではない。 スラッとしていてバランスの良い体形は、マネキンのようというかモデルみたいだ。 それと、顔が整い過ぎている。キリッとした目に、筋の通った鼻と厚くも薄くもない形の良い唇。俳優だと言われたら、だからなのか!と頷ける顔立ち。 でも、あんなに堂々と顔をさらけだして歩く俳優はいない。一般人なのかな。 私がスカウトマンだったら、間違いなく声を掛ける。「芸能界に興味ありませんか?」と。
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