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そんな彼の動きを目で追っていたら、前方を向いていた彼の顔が横に動き、私がいる方向で止まった。
んん?
なんか目が合っていない?
ううん、気のせいだ。
あんなにいい男が私を見るはずがない。たまたまこっちを見ただけ……と思っていると、なぜか彼はこちらに近付いてくる。
わ、私に向かってきてる?
ううん、違う、違う。
勘違いしてはいけない。
たぶん私の後ろに知り合いがいるとかいう……と、後ろを振り向いたが、私の後ろには幹の太い1本の木があって、人はいない。
木が大きいから日陰になっていているなと、この場所をと選んで座ったことを思い出す。
もしかしたら、この木に用があるのかも。どーんとした大きな木だから樹齢何年か気になっているのかも。
しかし、彼は木ではなく私を見ていた。思い違いではない。
なぜなら、私の隣に座って、私を見ているからだ。
どうして?
なんだろう?
心臓が忙しく動き出す。
ただ見惚れていただけで、何もしていないのだけど、なんか不快になることをした?
彼は、私をじっと見つめていた。
「名前と年を言って」
「私のですか?」
「もちろん」
声も素敵だな……って、聞き惚れている場合ではない。聞かれたことにはちゃんと答えないと。
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