その、時。

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その彼への電話は、数日振り。 『はい』 数コール鳴らすと、彼が電話に出た。 「―――電話でこんな話するのもあれなんだけど、私達別れない? ううん。別れて」 そう言うと、少し沈黙が流れた。 ややあって、彼が口を開いた。 『やっぱ、遠距離って続かないんだろうな。 うん。分かった。 けど、美帆子とは長い付き合いだから、これからは友達で』 「あ、うん」 『じゃあ。 俺、今、大学の友達と一緒だから』 「分かった。じゃあね」 そう言って、電話を切った。 「あれだな、最近の若い奴らって、えらくあっさりしてんだな」 永倉二葉は、不思議そうな目をこちらに向けて来る。 多分、別れ話を切り出した私も、それに頷いた彼も、あっさりとしていたのだろう。 「別れたくないと、泣いたり叫んだりした方が良かったですか?」 そういう修羅場を横で楽しもうと、この人は期待していたのだろうか? 「いや。べつにそんな趣味ねぇけど」 そう言って、興味を無くしたように私から目を逸らした。 多分、私と彼の別れがあっさりとしていたのは、 遠距離になり、最近は殆ど付き合っていないのと一緒だったからなのかもしれない。 私と彼、どちらが先に別れの言葉を言い出すのか、 そんな状態だった。
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