その、時。

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事を終えると、永倉二葉はタバコに火を点けて、それを吸っている。 私は身近に喫煙者が居ないので、 そのタバコの匂いが嫌で、逃げたくなる。 ベッドボードの灰皿に、タバコの灰を落としている。 寝転んだままそれを見ていると、近くに避妊具が置いてあるのが見えた。 けど、この人はそれを使ってくれなかった。 流石に中で出されたりはしていないけど。 今、永倉二葉はベッドに座り、私に背を向けている。 下着は身に付けているけど、まだ上半身は裸で。 その背に、鮮やかな虎が描かれている。 初めて生で見る、刺青。 きっと、この人はヤクザなのだろうとは思っていたけど、 本当に、そうなんだ。 「タバコって美味しいんですか?」 そう訊く私に、永倉二葉は灰皿にタバコを押し付け火を消すと、 再び私の上に乗り、キスをして来た。 口内に広がる、タバコの味。 不味い、と顔をしかめてしまう。 「うまいか?」 永倉二葉は私から唇だけじゃなく、体を離すと、 「シャワー浴びて来る」 そう言って、シャワールームの方へと歩いて行った。 私は遠ざかって行く、その背の刺青を見ながら、 私はこの人の女になったのだと思う。 ただ、それは純粋な付き合いではなく、遊ばれているだけみたいだけど。 ヤクザの女か。 この先、不安しかない。
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