彼の、事。

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「あの、永倉さんって、この店のオーナーなんですか?」 うちの店って本人が言っていたから、ここに来る迄そうなのだと思っていたけど。 店長やアヤノさんは、あの人をオーナーって呼んでないから、違うのかな?って。 「ああ。この店の実際のオーナーは、二葉さんのお兄さんの一枝(ひとえ)さん。 けど、実際この店を管理しているのは、二葉さんだけど」 実際のオーナーは、永倉二葉のお兄さん…。 「お兄さんは、かたぎの人だから」 私の色々な疑問を解決するような、その一言。 「…やはり、あの人ヤクザなんですね?」 その言葉に、店長は少し苦笑している。 「二葉さんのお父さんが組長で。 二葉さんは、最近その組の若頭に就任したばかり」 若頭…組長の息子…。 それなりに、その世界で地位のある人なんだ。 「ここの実際のオーナーのお兄さんは、かたぎなんですね…。 お兄さんだって、組長の息子なのに…」 「その辺りの事情は俺はよく知らないけど。 この店の売上は、けっこう組に流れてるみたいだけど。 お兄さんは、それなりに実業家として表の世界で成功している人みたいだから。 一応、この店は表向きクリーンだから」 「そうですか…」 先程、この店に入る時に目に入った、入り口の上の方にあったプレートに書かれていた、言葉。 "暴力団関係者の方、入店お断り" そんな言葉を掲げるくらいだから、 この店がヤクザの資金源だとは隠しているのだろう。
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