その、時。

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「…一週間、待って下さい!」 泣きながら懇願する、父親。 「一週間待って、金作れんの?」 そう言って、馬鹿にするように笑っている。 一週間待って貰っても、きっとお金なんて作れない。 ソファーに座ってた男が、スッと立ち上がる。 背が高い人だな、と場違いに思う。 それに、顔だって整っていて、 こんな形で見なければ、単純になんてカッコいい人なんだろうか、と、浮わついたかもしれない。 「奥村、お前の娘抱かせるなら、 3日待ってやるよ。 どうする?」 その男は父に目を向けると、次に私を見た。 その目が、睨まれているようで、 体が震える。 その目よりも、その言葉。 この人、私を? 「―――3日、待って下さい」 父親のその言葉に、その男は大きく舌打ちした。 「お前も、クソみたいな父親持って可哀想だな」 その男は私に近付いて来る。 ちょっと、待って…。 「…姉ちゃんに近付くなよ!」 碧斗が、その男に近付きスーツを掴んだけど、それは簡単に振り払われて。 碧斗は床に尻餅をついている。 「父親はクソだが、弟はまともじゃねぇか」 碧斗は、この男を睨み付けていて。 再び立ち上がり、この男に掴み掛かろうとしたが、 そんな碧斗はこの男に蹴られて再び床に転んだ。 「弟に手を出さないでよ!!」 そう叫ぶけど、怖くて体が動かない。 碧斗を、助けたいのに。
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