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暫く、呆然と天井を見ていた。
私、犯されたんだ、とそう思う。
いつものように家に帰って来て、そこに居た知らない男に。
それに、父親の借金。
会社をクビになっていて。
社宅だから、この家にもいつまで住めるかも分からない。
もしかして、これってドン底ってやつ?
弟の碧斗は、どうしているのだろう?
私、自分が逃げるのに必死で、碧斗を見捨てて自分の部屋へと逃げ込んだ。
最後に碧斗を見た時、あの英二という男に足で押さえつけられていた。
父親は…。
お父さんなんか、もうどうでもいいや。
父親のせいで、私は…。
そう思うと、止まっていた涙がまたこみ上げて来て、目から溢れる。
◇
どれくらい時間が経ったか分からないけど、
部屋が真っ暗で。
寝ていたわけではないが、何も考える事も出来ず、ただ時が過ぎるのを見ていた。
流石に、もうあの男達は居ないだろう。
私は体を起こし、衣服を整えた。
その際、お腹の上のそれに気付き、
あの永倉二葉という男に対して、憎しみが湧いた。
きっと、今ならば殺せる。
あの男に、ハサミを向けているのが今だったなら、私はその喉にハサミを突き刺しただろう。
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