要らないものは要らないよね

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あなたは、どこにいますか? 『この桜吹雪が目に、入らぬかぁああ~~~!!!キメ☆』 いい演技ができたと思う。 そう頷きながら他人事のように私はビデオを再生していた。 委員会の名目で休日登校し、  本日視聴覚室にいる私、美桜、それからみちは卒業生のためのビデオを撮影、制作中。  なのだが、私が1日休んだ間にみちが柴田さんとなにやら揉めたらしい。 何があったかは知らないが、柴田さんへの謝罪プランを考え、『直接謝罪しに行かせてください』と良識あるアピールをしてみてはどうかって美桜は言ったけれど、みちは嫌だと言って譲らない。 卒業おめでとうございます!  スクリーンがタイトルを映し、 ビデオが進む。10分程度のドラマ仕立てになっていて、在校生が出演していた。 私は冒頭の吹雪……をクラスメートに撒く役をした。 金さん張りの処罰言い渡し。 罪状?…… 女の子へのつきまといストーカー行為、推薦・擁護人→その補助に権力の濫用! あなたが好きだ、卒業までにどうしても言いたかったんだ! 要らないなんて、言わせない! きっしょ……。と思うのは内緒だ。  なにしろこのドラマの脚本家が、すぐ横でパイプ椅子に偉そうに腰かけるみち、その人なので。だから私は自分の演技や他人の演技自体の出来に着目して視線をそらす。  これ、イケメンか、どの角度からみても両思いじゃなければ、普通に気色悪い脚本なんだけれど、すぐ横に並んで座ったまま揉めている美桜たちの話を齧り聞きするには、 主演の男子はガチだったらしい。 主演の女子生徒、柴田さんはというと彼氏がいたらしい。確かにクラスで何回か、クラスメートが柴田さんをからかうのを、また主演の田中さんをからかうのを見たことがある。 たかが演技とは言え、感情が役にすべて割りきれない思春期の生徒を拗れさせる一因になってしまったようだ。 「だって田中君、すごい真剣でさ、みんなで応援してあげたいじゃない」 柴田さんからしたら、集団リンチだよ? 美桜が胸を張る。 「ま~まぁー! ガツンとあやまればなんとかなるなる!」 そ、そうだよねとみちが頷いた。 でも私はみちが柴田さんに密かに好意を寄せているのを聞いたことがあった。危険な策略にも見えてしまう。このままみちから離れた方が彼女にとってはいいかもしれない。 私はスカートから携帯を出すと、柴田さんのアドレスを開くと文字を打つ。 「今、どこにいますか?」 そして、みちが謝罪にうかがうまえに、送信。 完
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