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「母さんは元気だったの?
今の旦那さんとは仲良くやってるの?
もしかして、あたしの妹か弟がいたりして?」
私は、こんなに淡々と話す美希の心中を図りかねた。
泣きながら罵倒されることは覚悟の上だったからだ。
「いないわよ」
と、最後の問いだけに答えた。
今の夫は一ヶ月前に病死したがそんなことを美希に言うつもりはなかった。
「父さんは五年前に死んだよ」
「それは、知ってた。一年ほど前に偶然、知可子おばさんと会ったのよ」
知可子は美希の叔母で前の夫の妹だ。
彼女は私のことをどうこう言うことはなく、兄の死という事実だけを私に告げてすぐ別れた。
「知ってた、んだね……あたしも母さんに知らせようか迷ったけど、その時はどこにいるかもわからなかったから」
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