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第1章
少女は透き通るように白い肌と、そよ風にでも飛ばされてしまいそうな、妖精のように細い体をしていた。森の精霊が悲しみに痩せ細って、ついに木霊だけになってしまうように、その少女もいつか消えてなくなってしまうのだ。
少女と言っても、彼女はすでに17才か、18才だった。だが、女と呼ぶのは相応しくない。そこで、この物語では少女と呼ぶことにしよう。
少女はベッドからゆっくりと体を起こした。サイドテーブルの引き出しを開け、リップスティックをつまみ出した。明るいピンク色をそっと唇にのせる。だが、それが刺激になったのか、少女は激しく咳き込んだ。死が少女の体を蝕み、小さな悪魔となってその愛らしい口から次々と出てくるようだった。
その部屋には独特の匂いがした。緩和ケア病棟の特別個室。その部屋から外に出るためには、カロンの小舟に乗らなければならない。彼女は、帰らざる、人生最後の小さな部屋に閉じ込められているのだ。
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