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中華料理屋を離れてすぐ、自転車が冷たい風を切り始める。
自宅のケーキ屋に戻るペダルは、今日は少し軽い。
「暑苦しー。」
鬱陶しそうにつぶやくけど、目元の泣きぼくろはキュッと引き上がっていた。
店の中に入ってすぐにスマホが鳴った。サヤカからだ。
「ちょっとー!すぐ来るって言ってなかったっけー!」
相変わらずの爆音の中、大声が電話口から聞こえる。
「ごめんごめん、もうすぐ行くって!」
エプロンを外しながらやっと出かける準備に取り掛かる。
「もうすぐってさー、ほんとあんた今どこにいんの?」
私は気がつけば満面の笑みで、元気いっぱいに答えていた。
「チャーハンの中だよ!」
いやまだ店かよ、と怪訝そうな声が電話口から響いた。
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