「あたしは、知りたい」

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 男はそう言うと、わずかに首を傾げた。  サラリと黒絹のような髪が揺れて、またほんの少しだけ秀麗な顔が見せる角度が変わる。  その段階になるに至って、私は黒と白以外に男を構成する色があることに気付いた。 「お前が手始めに花咲家の人間から殺したのは偶々なのか? それとも」  深紅。  まるで、鮮血のような。  あるいは、椿のような。  刀の鞘に巻かれた下緒が、モノトーンの世界で鮮烈な色を刻んでいる。 「何か知っていたことがあったから、なのか」
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