「あたしは、知りたい」

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 どこもかしこも気が狂いそうなくらい真っ白な部屋にが足を踏み込んできた瞬間、あたしは状況を忘れて思わず目を丸くした。  真っ先に目に入ったのは、喪服のような黒服と、その腰に下げられた日本刀だった。  サラリとこぼれかかる髪も黒。  ネクタイも黒。  両手も黒い手袋に包まれていて、唯一ジャケットの中のワイシャツだけが白い。  ──若い。  今すぐお葬式に出席できそうな装いの男は、気だるげに顔を上げるとあたしを見やった。  こぼれかかっていた髪が重力にしたがって払われ、その下にあった瞳が露わになる。  最近まで現役の女子高生だったあたしが言うのも何だけど、すごく若い人だった。  多分、同年代くらいだろう。  もっと年がいった人間が出てくるものだと思っていたあたしは、色んな意味で目を丸くする。  ここまで白と黒だけで構成された人を初めて見た驚き。  まさかの同年代の登場。  ……そして何より、髪の下から現れた容貌が、ちょっとやそっとじゃお目にかかれないくらい美しかったことに。
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