「あたしは、知りたい」

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 人が人を選定し、人が人の命を選別する。  まるで家畜のようだと、あたしは思う。  学力的に、体力的に、一芸的に秀でている人間。  社会的に有意義的に生きている人間。存在理由が重い人間。  そういう人間を、国が選別して、優先的に生存を保証する。  逆を返せば、学力的に、体力的に、一芸的に劣っていれば、それだけで国民は国に殺されてしまう。  生体的な不良品である病人。  存在理由が見出せない浮浪者。  存在が許されない重罪人。  そういう人間を屠殺して場所を空けて、この国は選別した人間を飼育しているんだ。  この国だけじゃない。  世界中、どこだってそう。  だからみんな、この国という狭いゲージの中で必死に生きようともがいている。 『生存を許される存在理由』という椅子を、みんなで必死に取り合っている。  なんて、滑稽。  ……かく言うあたしだって、最近まで必死にそのデスゲームの中であっぷあっぷしていたわけなんだけども。
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