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入ってきたドアに背中を預けるように立った男を睨み付けて、あたしはドスの効いた声を上げた。
胸の内のドロドロした感情が滴る程に乗せられた声は、あたし自身が信じられないくらい低い。
きっと、声が物理的な攻撃に化けることができるならば、このひと声で目の前の男を縊り殺すことができただろうと思うくらいには。
「でも、あたしの中では何も終わってないのよっ!!」
床に固定された椅子の上。
両腕を後ろで椅子に固定された拘束服。
こんな装備の中に押し込められていなかったら、今すぐ男に駆け寄って、気だるげにさらされている喉笛を噛みちぎってやったのに。
「あたしは、知りたい」
そんな激情を押し殺して、あたしは低く地を這うような声と殺意に染まった視線を男に向ける。
「あたしの無二の友人が、なぜ殺されなければならなかったのか」
フワリと、脳裏に可憐な笑みがよぎった。
春の木漏れ日や、花がほころぶ喜びを思わせるような、この世界で一番美しくて幸せな笑みが。
「花咲咲夜。なぜ、彼女が片付けられなければならなかったのかを」
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