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7
俺は、奇妙な夢を見た。自小説に迷い込んで、俺が認められる夢。それは青春物語にしては、あまりにも心に刺さるメッセージを含んでいて、今までの人生に対する後悔とともに、未来の自分を奮い立たせるエネルギーにもなった気がする。ネジよりも、ひねり揚げよりも捻くれていた俺の人生に差し込んできた、一筋の屈折していない光。
「さてと、書きますか」
俺は無色透明な水を一口飲んで、ノートパソコンを開いて作業を始めようとした。
「いらっしゃいませ」
店員の声がする。老舗の喫茶店は今日も落ち着きを保ちつつ、東京の生活で疲れた人間を癒してくれる。
「珈琲、ホットでください」
俺はふと、その声が気になったから顔を上げたのだ。それが偶然なのか必然なのか。またはこの世界すら夢の世界なのか。正体はわからないが、俺は思わず彼女の姿を見て声が出た。
「チカちゃん?」
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