始まり

1/1
38人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ

始まり

天井を見上げた。 しばらくボーッと見ていると、そこにはうっすらとシミのようなものがあるのに気付いた。その形はまるでサナギから抜け出し、羽を大きく広げた蝶のようであった。 閑散とした少し大きな部屋に、私は横たわっている。 辺りに注意を向けると、金属音がぶつかり合うような、擦れた音がする。強く照らされた光は、私にだけ注がれている。 そこでは、何人かの男女が私を囲み、(せわ)しなく足と手を動かしながら黙々と準備されていく。 その準備が整ったのか、皆定位置につき、男の人が私に声をかけた。 「それでは、これより始めます。あなたが目覚める頃には、もう全てが変わっていますよ」 サナギから変態する蝶は、羽化するその瞬間、どんなことを思うのだろうか…… 私は意識が遠くなるのを感じながら、目を閉じそのまま眠りについた。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!