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始まり
天井を見上げた。
しばらくボーッと見ていると、そこにはうっすらとシミのようなものがあるのに気付いた。その形はまるでサナギから抜け出し、羽を大きく広げた蝶のようであった。
閑散とした少し大きな部屋に、私は横たわっている。
辺りに注意を向けると、金属音がぶつかり合うような、擦れた音がする。強く照らされた光は、私にだけ注がれている。
そこでは、何人かの男女が私を囲み、忙しなく足と手を動かしながら黙々と準備されていく。
その準備が整ったのか、皆定位置につき、男の人が私に声をかけた。
「それでは、これより始めます。あなたが目覚める頃には、もう全てが変わっていますよ」
サナギから変態する蝶は、羽化するその瞬間、どんなことを思うのだろうか……
私は意識が遠くなるのを感じながら、目を閉じそのまま眠りについた。
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