パーツ紛失事件

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「輪廻学会もとい魂循教の残党が、今回の事件を起こしている可能性が高い。被疑者は外科医の今井直政と、元外科医でエンバーマーの紺野真司。  足、手、頭が奪われたということは、次は胴体が狙われている可能性が高い。それと、異能力者だね。  何か気になることや、気づいたことはあるかい?」  工藤はノートパソコンを開くと、事件を簡潔にまとめてふたりに聞く。 「所長、犯人は灯火さんを狙っている可能性があるのではないでしょうか? まだ被疑者本人達との接触はありませんが、妻や家政婦が協力者で、灯火さんの存在を伝えているかもしれません」 「僕もそう思って、灯火くんに言ったんだけどね……」  工藤がため息をついて灯火を見ると、彼はそっぽを向いた。その態度で捜査すると駄々をこねたのを察した。 「それより、気になることがある。他人の身体を使っての蘇生には、性行為をしていない身体が必要だ。  もうひとつ条件。年齢差は5歳以内。つまり、19歳から26歳の処女が狙われる」 「あぁ、デュラハンの年齢は分からないけど、他のふたりはその年齢だね。君はふたりも処女だと言いたいのかい?」  工藤の問いに灯火は首を横に振った。 「いや、手足の持ち主が処女か非処女かは重要ではない。  このご時世だと、高校生で処女を捨ててる女は多いからな。  実際、俺が高校生の時に『高校卒業するまでにはえっちしたい』なんて言ってる女が何人かいた。  今はネットも普及してるし、パパ活なんてモンがある。最低19歳の若い処女を捕獲するには、並々ならぬ努力が必要なんじゃないのか?」  灯火の言いたいことは分かる。椿の同級生だって、高校生のうちに処女を捨てたいと言っている子は何人かいた。  だが、19歳から26歳の処女がいないということにはならない。 「処女の胴体を手に入れるために、少女のうちから手懐けていたということは考えられないか?」 「え? どういうことですか?」 「さっきも言ったが、19歳以上の処女を見つけるのは苦労すると思う。その歳まで処女なら、相当奥手か、本当に大事な人に捧げたいかのどちらかだろうから、ネットで募集してもひっかかるか分からないし、その人が本当に処女という確証はないだろう。  だったら、少女のうちから手懐け、19歳になったら殺してしまえばいい。そっちのほうが、確実だ」  確かにそれなら確実に処女の胴体を手に入れることはできるだろうが、成人男性がどうやって少女を手懐けるというのだろう?  子供も親も、年々防犯意識が高まってきている。該当年齢の処女を探すより、少女を手懐ける方が難しいだろう。
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