パーツ紛失事件

66/88
27人が本棚に入れています
本棚に追加
/182ページ
「営業マンとか、平日休みの人とか、学校サボった大学生が行くらしいよ。  これ、近くの風俗街のデリヘルなんだけど、朝10時からやってるって」  工藤は椿の前にスマホを置いた。真っ赤なランジェリーを着た若い女性が、官能的な表情でこちらを見ている。女性のすぐ近くに、”朝10時から!”と書かれていた。 「他にもいくつかサイトを見たけど、日中からやってるところは結構あるみたいだよ。とりあえず、日中からやってるところだけでも調べておこう」 「分かりました」  灯火のことは心配だが、今は目の前の仕事に集中するべきだ。椿は電子レンジで朝食を温め始めた。  午前10時、椿と工藤は風俗街、もといホテル街にいた。ラブホテルの看板はシックなものもあれば、ド派手なものもあるが、店舗型風俗店の看板は、どれも目がチカチカするほど派手か、可愛い女の子の看板があるかで分かりやすい。 (落ち着かない……)  いくら捜査のためとはいえ、こういった場所にいるのは抵抗がある。上司といるからなおさらだ。 「えっと、そこにある”熟館”ってところはやってるみたいだね」  工藤が指差したのは、人妻ヘルスと言われている店で、女性達は人妻という設定で働いているらしい。  店に入ると、店主の男性は困惑した様子だ。  女性単体なら面接、男性単体となれば客。働いてる女の子と来るなら同伴だが、見知らぬ男女が入ってきたのだ、困惑もするだろう。 「困りますよ、お客さん。寝取りプレイするにしても、両方共うちの女の子じゃなくちゃ。トラブル起きても責任とれませんからね?」 「あははっ、彼女は僕の妻でもなければ、恋人でもありませんよ。ちょっとお話聞きたいんですけど、いいですか?」  工藤が警察手帳を見せると、店主は更に顔をしかめる。 「どこからどんな通報があったのか知りませんけど、うちは本番なんてご法度ですし、違法なことなんてしてませんからね」 「いえ、僕達はある女性を探しているだけです。この女性、ここで働いていませんでしたか?」  工藤が紺野の婚約者の写真を見せると、店主はしばらく見た後、首を横に降った。
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!