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「営業マンとか、平日休みの人とか、学校サボった大学生が行くらしいよ。
これ、近くの風俗街のデリヘルなんだけど、朝10時からやってるって」
工藤は椿の前にスマホを置いた。真っ赤なランジェリーを着た若い女性が、官能的な表情でこちらを見ている。女性のすぐ近くに、”朝10時から!”と書かれていた。
「他にもいくつかサイトを見たけど、日中からやってるところは結構あるみたいだよ。とりあえず、日中からやってるところだけでも調べておこう」
「分かりました」
灯火のことは心配だが、今は目の前の仕事に集中するべきだ。椿は電子レンジで朝食を温め始めた。
午前10時、椿と工藤は風俗街、もといホテル街にいた。ラブホテルの看板はシックなものもあれば、ド派手なものもあるが、店舗型風俗店の看板は、どれも目がチカチカするほど派手か、可愛い女の子の看板があるかで分かりやすい。
(落ち着かない……)
いくら捜査のためとはいえ、こういった場所にいるのは抵抗がある。上司といるからなおさらだ。
「えっと、そこにある”熟館”ってところはやってるみたいだね」
工藤が指差したのは、人妻ヘルスと言われている店で、女性達は人妻という設定で働いているらしい。
店に入ると、店主の男性は困惑した様子だ。
女性単体なら面接、男性単体となれば客。働いてる女の子と来るなら同伴だが、見知らぬ男女が入ってきたのだ、困惑もするだろう。
「困りますよ、お客さん。寝取りプレイするにしても、両方共うちの女の子じゃなくちゃ。トラブル起きても責任とれませんからね?」
「あははっ、彼女は僕の妻でもなければ、恋人でもありませんよ。ちょっとお話聞きたいんですけど、いいですか?」
工藤が警察手帳を見せると、店主は更に顔をしかめる。
「どこからどんな通報があったのか知りませんけど、うちは本番なんてご法度ですし、違法なことなんてしてませんからね」
「いえ、僕達はある女性を探しているだけです。この女性、ここで働いていませんでしたか?」
工藤が紺野の婚約者の写真を見せると、店主はしばらく見た後、首を横に降った。
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