風変わりな新人

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「彼を言い表すのは難しい。会ってみれば分かるよ。そうだ、彼の部屋を案内しよう。そうすれば、少しは分かるんじゃないかな」 「書斎、資料室、寝室といったところですか?」  イラ立ちのあまり、つい皮肉じみた口調になってしまう。工藤はそれを気にする様子もなく、珈琲を飲んで苦笑する。 「もう少しで満点だったね。おいで」  工藤は立ち上がると、手招きをする。椿は渋々ついていき、2階に行く。最初に連れてこられたのは、椿の部屋に1番近い部屋だ。 「まず、ここが彼の寝室」  中に入るとベッドとテーブルセット、本棚、サイドテーブルがすでに設置されていた。部屋の隅には△と✕のダンボールが積み重なっている。 「この家具は……」 「もちろん経費だよ」  当たり前だと言わんばかりの工藤。この部屋にも、一般人の部屋を経費で用意する組織や工藤にも、イラ立ちが増幅する。このままではおかしくなりそうだ。 「次に、こっち。君の言葉を借りると、書斎兼資料室ってとこかな」  隣の部屋に入ると、窓までもが本棚に埋め尽くされていた。それだけでは飽き足らず、図書館のように背中合わせになって並ぶ2組の本棚。少しあいたスペースには、木製のテーブルセットが置いてある。  ○が書かれたダンボールは、部屋の隅に積まれていた。  ここでも何か言おうとした椿だが、口を開いても皮肉しか出ない上に、工藤の返事で余計にイライラしてしまうと悟り、沈黙を貫いた。 「最後に、ここなんだけど……。覚悟してね?」 「覚悟?」  どういう意味かは分からないが、深刻な顔をして頷く工藤に、嫌な予感しかしない。何が待ち受けているのか知らないので、覚悟のしようがないが、頷いておく。それを了承と取ったと認知した工藤は、ドアを開ける。 「なんですか、これ……」  2階で1番狭い部屋は、一言で言うとモダンな取調室だ。異様なのは、目の前にある椅子。ドアから見て向かいにあるパイプ椅子とテーブルは、一般的な取調室と同じだ。  刑事が座るであろう椅子も、本来ならばパイプ椅子なのだが、社長室にありそうな、革張りの立派な椅子だ。
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