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「僕には関係ない」  ホッとしたのも束の間、次男の篠岡朝日は一級品の冷たさで言い放った。 「僕は晩餐会に出ることすらイヤだったんだ。終わってからはすぐに自分の部屋に戻った。なんで僕が母さんの還暦を祝わなくちゃならないんだ。知らないよ。向こうがこっちに興味がないんだから、こっちだって無関心になるのは当たり前だろ」  今回の騒動が起きていること自体、朝日は迷惑に思っているようだった。かかわり合いになりたくない、事件の真相すらどうでもいいといった風に、「僕には関係ない」とくり返すばかりでとりつく島もない。 「紀代子さんがいてくれるから、この家に住んでいられるんだ。紀代子さんのごはんがまずかったら、県外の大学へ進んでた。母さんが死んでも全然悲しくないけど、紀代子さんが死んじゃったら、僕、しばらく立ち直れないと思う」  この発言から、泉の話が事実だったことが窺える。朝日が生まれた頃には保田紀代子は篠岡家に仕えていて、朝日に母親らしいことをしてくれたのは被害者ではなく保田だったのだろう。被害者がいかに夫と長男に依存していたかがよくわかるエピソードだった。
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