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地球の夜の部分に目を凝らす。
小さな光がある。
例えば、このアパートのプールの嘘くさい照明。
遊牧民族の焚き火。
どこかの国のハイウェイを流れる車の列。
動きが速すぎて止まって見える飛行機。
パパの運転する車の孤独なヘッドライト。
ママの眠る部屋のナイトライト。
どこかの国の街灯。
どこかの海の上の船室から漏れる明かり。
サラが僕の名前を尋ねた。
「イーサン。」
僕は答える。
『良い名前だと思うわ。覚えておく。』
僕は突如、確信を持って、知る。
彼女がこの接続から離れようとしていること。
「また会える?」
彼女はどこにいるんだろう。
切れてしまったら、二度と繋がらない。
『イーサン。奇跡って何度も起こるものじゃないわ。そう思わない?』
「奇跡のようだって、思ってくれるの?」
ほら、僕の心臓はすぐ舞い上がる。
僕には分かってる。
学校に行っても、ショッピングモールに行っても、いくらネットワークの中をさまよっても、出会えるってことは、滅多にないことなんだ。
『あなたをがっかりさせたくないの。』
「がっかりなんかしないよ。」
『わたしもがっかりしたくないのよ。』
鼓膜をささやきが揺さぶる。
僕は、プールサイドの、黒々としたデッキチェアの影を見つめる。
日の出はまだ遠い。
「ね。君は僕とキスがしたいって思う?」
勇気を出して尋ねた。
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