へーんしん(完結)

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 しばらく音沙汰なかったBlancちゃんからメールが届く。 『ボストンの冬は寒いと聞いていますが、お元気ですか?』  なんじゃ?!ボストン?!  藤木の野郎、俺を勝手にボストンに飛ばしやがったな。 「元気な訳ないだろ。Blancちゃんに会いたい。寂しくてやりきれない。」  俺は正直に返信した。  会っている時には、またすぐに会えそうな気持ちでケンカする余裕さえあるのに、しばらく連絡が来ないと、寂しくて心が折れそうになるのは本当のことだ。 『私、ボストンまで行こうか?』  いやいや、俺、本当は北海道だし。  だけど、Blancちゃんの気持ちが嬉しい。 「クリスマスには日本へ帰る。プレゼント何がいい?」    すぐに返信が来る。 『令草くんのぬくもり』  ヤベ〜!  めちゃ嬉しいけど、マジ、ヤベ〜!  どう返信する? 「俺もBlancちゃんの胸に甘えたい」  イヤ、それはダメだろ。 「ああ待ちきれない」  うーむ、男らしくない。 「早くクリスマス来ないかなぁ」  はぐらかしてる感、見え見え?!  返信の言葉に迷っていると、久しぶりに藤木から電話がかかってきた。 『その後、ランちゃんとは、うまくやってるのか?』  ランちゃんというのはBlancちゃんの仮の呼び名だ。 「おまえ、俺をボストンに飛ばしたな!」 『あーごめん。あの時、急におまえが居なくなったものだから、ボストン大学での採用が決まって急に現地へ飛ばなきゃならないと言ったかもしれん』 「うわぁ。それまた大胆不敵な幻想だな!ボストンかあ、行ってみたいなあ。」 『行って来ればいいじゃないか。Blancちゃんと。あの子、マジで、おまえが好きなんだと思う。この際、すべてバラしちゃえば? 多分、真実を知っても、おまえを愛してくれるよ。』 「そうかな?俺、自信ないよ。」 『大丈夫だって。思い切って告白してみろよ。本当は40歳だって』 「いや、俺まだ39歳だから」 『どっちでもいいよ。とにかく、いつまでもウソをつき通すことは不可能だし、それより、あの子、本当にいい子だからさ。おまえ、幸せにしてやれよ。』 「うん。考えてみる。ところで、一つ教えて。ランちゃんな、クリスマスプレゼント何がいい?ってメールで聞いたら、令草くんのぬくもり、って返信来たんだ。どう返信すれば良いかな。百戦錬磨のおまえなら、何かシャレた言葉、思いつかないか?」 『うぅ、ランちゃん。かわいいのぅ。抱きしめてやりたいのぅ。おまえの正直な気持ちを書けばいいんだ。その返信見て、おまえはどう思ったんだ?』 「嬉しくて飛び上がったよ。もう、今すぐにでも抱きしめたくてビンビン・・」 『そのまま書けばいいんだ。ビンビンは書かない方がいいかなぁ・・あははは』 「わかってるよ。ははは。そうだなぁ。正直が一番かも知れないなぁ。」  俺は、藤木のいつになく真摯な提言に戸惑いを感じた。  結局、俺は悩みに悩んでBlancちゃんに、こう返信した。 「正直、嬉し過ぎて、なんと返信してよいのか戸惑った。今度こそ、言葉だけじゃなく、本気で俺の情熱を受け止めて欲しい。」  返信を送ってしまってから、俺は何度も読み返し、不安になった。  そもそも、俺とBlancちゃんは、そんな関係だっけ?  何となく、そんな雰囲気になって、いつまでも俺がハッキリしないみたいな話になってるけど、そもそも、まだ2回しか会ってないし。  だけど。  だけど、Blancちゃんは俺のぬくもりが欲しいと、勇気をを出して言ってくれたんだ。  それなら、俺が、情熱を受け止めて欲しいと言っても不自然ではないはずだ。  ああ、ダメだ。  俺は恋してしまったかも知れない。    イヤ。  ごまかすな。  かも知れないのではない。  俺は恋している。  ああBlancちゃん。  会いたい。  会って抱きしめたい。  キスしてキスして、すべてを奪いたい。  オッさんな俺と結婚して欲しい。  オッさんの俺は頑張って、きっとBlancちゃんを幸せにしてみせる。  くはぁ〜!  どうにかならんか!  ツラい。  不安だ。  こんなことなら、いっそ、初めからオッさんのままで会うべきだった。  イヤ、その場合は、ストレートに断られ、京王線の改札口を出ることもなく引き返すことになったかも知れない。  これでよかったんだ。  ほんのわずかでも、青春の夢を見ることができたではないか。  たとえ数時間でも、お互いにワクワク、ドキドキして、そして恋して、今、こんなにも切なくなっている。  この年になって、こんなに可愛いBlancちゃんに恋することができただけで幸せだ。  最後は、男らしく正直に、ありのままの自分をさらけ出し、堂々と撃沈しよう。
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