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数日後、藤木から身勝手な電話が来る。
Tホテルから俺にクリスマス・ピアノコンサートの依頼があり快諾したと言う。
同じ日の午後、西園寺先生の長男が勤務するT大学附属病院での院内コンサートもよろしく頼むと。
ハレンチなまでの身勝手さ!
ピアノを弾くことは問題ない。
が、若い俺の顔が売れること。
それは大問題だ!
あまり活動すると引込みがつかなくなる。
ウルトラマンじゃあるまいし。
まして、金など稼ごうものなら、ややこしい事になる。
脱税容疑で訴えられても困る。
「俺、堂々と正体を明かして素のままで演奏するよ。もう若返るのはヤメる。」
と言うと、藤木は慌てて
「それは困る。今回だけは若い姿で来てくれ。Tホテルのラウンジの支配人は、あの時のおまえがピアノ演奏している写真を使ってポスターを制作中だ」
という。
「勝手に何やってんだよ!」
「頼む!俺にもいろいろな事情と義理があって今回は断れなかった」
ったく!
どんな義理だ、どうせロクでもない事で世話になってるに違いない。
「わかったけど。ギャラは受け取れない。ギャラの代わりに最上のスウィートルームにランちゃんと宿泊させてくれと伝えておけ!」
「いゃ〜ありがとう。引き受けてくれるんだな!良かった〜。スウィートルームくらい、お安い御用だ。」
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