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いよいよ明日がクリスマス・コンサートという夜、俺はBlancちゃんに電話した。
明日の夜、プロポーズしようと思っている相手だ。
メールじゃなく電話でいいだろう。
「今、話せるかな?」
「いいわよ」
「明日、午後からはコンサートの仕事だけど、午前中、二人で行きたい店があるんだ」
「店?どんな?」
「俺、Blancちゃんにプロポーズする予定なんだ。だから指輪を買いに行きたい。」
「プロポーズ?!聞いてないわ!」
「今、初めて言ったんだ。聞いてないに決まってるよ。あははは」
「ちょ・・ちょっと待って・・それって順番おかしくない?」
「順番なんてどうだっていい。俺はBlancちゃんの恋人になりたいけど、将来の約束もなく深い付き合いできるような軽い人間じゃないんだ。わかるだろう?本気で君を抱きしめたくても、遊び半分な気持ちで抱きしめることなんてできない。だから、すべてを告白して、君にプロポーズしようと思ってる。」
「プロポーズしようと思うって・・私まだ、親にも何も伝えてないし」
「親に伝える前に、俺はBlancちゃんに告白しなきゃいけない事がいくつかあるんだ」
「告白?プロポーズ以外にも何か別の告白があるの?」
「あるんだ。今、告白してもいい?」
「いいわ」
「俺さ。本当は大学生じゃないんだ。」
「やっぱり。高校生?」
「いや。本当は39歳なんだ」
「ええっ? よくそんな嘘つけるわね」
「嘘じゃない。悲しいけど事実さ」
「本当に本当に・・本当?」
「本当さ。札幌の大学病院の医者なんだ」
「医者? 真面目な話?」
「ごめん。本当にごめん。」
「いや・・ってか・・どういうこと?」
俺はテキトーな呪文を唱えたら若返ったことを正直に伝えた。
ついそのままBlancちゃんとの時間を楽しんでしまったこと、騙してしまったことを謝った。
「ハッキリ言って信じられない。何を信じたらいいのか、わからない。」
Blancちゃんは、そう言うと泣き出してしまった。
こんな話、信じられないに決まってる。
俺が第三者でも、絶対、信じない。
「信じられないよな。でも今度、会った時は、朝までいっしょに過ごしてほしい。そうすれば魔法は解けて、俺は39歳の姿に戻る。それを見届けてもイヤじゃなかったら、どうぞ結婚して下さい。」
「やっぱり、なんとなく順番が変だけど・・だけど・・私は、どうすれば良いの?私は親に何と言ってホテルに泊まればいいの?」
「わかった。先に君のご両親に、俺が今の話を説明すれば良いんだな?」
「ええっ?!・・信じてもらえないに決まってるわ。」
「もし、ご両親が信じてくれて、承諾してくれたら、Blancちゃんは俺と結婚してくれる?」
「・・・」
「やっぱり無理かぁ。だよな。39歳はキビしいよな。ごめんね。当然だよな。悪かった。一方的に俺が先走り過ぎた。とりあえず、この話は忘れてくれ。本当にごめんね。」
俺は、それだけ言うのがやっとだった。
電話を切った。
年甲斐もなく、泣けた。
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