調律具合

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父親とは本当に反りが合わない。昔から衝突してばかりだったから正直言って好きではないにも関わらず、私は性格が父にそっくりだった。それでも母の血も受け継いでいるのだから、全く同じにはなりたくないと、父を反面教師にし、できる限り鏡から離れようと試みた。性別が違うこともあって、多少の効果は見られた。 ……が。ここからが怖い。 ある日の夕食で…おっとその前に。 父は普通に家にいるから、囚人ではないとして。旧型のロボットなのではないかと私は常日頃から疑っている。 何故なら、出勤はともかく、夕食の時間、見ているテレビ番組、それに対する小言の内容、入浴のタイミング、寝室に行く時間、起床時間、休日の行動に至るまで、すべて決まっているのだ。毎日、毎日。父の行動を見れば時間が分かるほど正確に。 本当に。笑えてしまうほど。 何かのきっかけで、それがずれるとイライラし始める。つまり、エラー発生だ。コードがどこかに表示されるはずだ。額か?うなじか?とても簡単な取説を引っ張り出してきて、エラーコード一覧を見なければならない。センサーもついていて、いつも同じ場所で、同じセリフを言うようにプログラミングされている。ロボットだから当然、抑揚もない。 大人になってから気づいた私は愕然とした。かあ、そうか。ロボットだから口で言っても効果なかったんだ。アップデートしないとだめか。 そんな父…に見えるロボットは、家族に合わせたりしない…もとい、できないので一人だけ夕食が早い。だから私とは時間が完全にずれている。 ここで先程の話に戻ろう。ある日の夕食で、母の料理に対して、味について感想を述べた。母は非常に驚いてから笑いを堪えている。どうしたの?と聞けば、何故?と返ってきた。 「お父さんと、全く同じこと言ってるよ」 なんだと?私は耳を疑った。 別の日、リビングに大きな球体の花瓶が増えていたのを見て私は 「何?この壺?」 と言ったのだが、その時も母は同じ反応をした。それは、日常茶飯事と言うほど多くはないが、デジャブで片付けられるほど少なくもない。 四年に一回のオリンピックの如く、実に絶妙なタイミングで発生する。 私が父の部分を多く受け継いでいるという証拠だ。何せ、示し合わせたわけではない。鏡が好きではない私にとっては、DNA鑑定をして数値で見るよりも遥かに怖い。
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