ライバル

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春樹が先に玄関の中へ入って 「真希。おいで」   優しい笑をしながら手のひらを上に向け右手を差し出して 私を迎え入れてくれようとしてる。 …ダメ…。 そう思っても、甘い空感に頭がボーっとしてしまって。 私も笑みを浮かべながら 春樹の差し出した手のひらに私の手のひらを重ねた。 春樹は私の手を優しく握りしめてそっと 春樹の方に私を引き寄せた。 後何ミリかで春樹の身体と私の身体が触れそうな距離。 私は、身体が浮いているようで離れる事ができなくて、そのまま立ち尽くしながら彼の顔を見上げた。 いつも以上に甘くて優しい目をしている春樹。 玄関に入ると、エレベーターの中の空気感と同じ感覚になって 私の胸がざわついて、身体がその空気感で ジンジンしだし、いたたまらなくなってきていた。 立っていることすら難しくなり 春樹の身体にもたれかかり 顔をまた見上げて見てみると ニコリと笑い 私の背中に軽く触れながら手を回して、 肋骨あたりに手の平をそっと添える様に置いて支えてくれた。 優しく、そっと触れてくるのがわかった。 私は、春樹の身体に重なりながら 胸元に顔を置いた。 ゆっくり、ゆっくり 部屋の中に入っていく。 …おう…ちゃん。 私はただおうちゃんの名前を繰り返し繰り返し呼んでいた。
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