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パニック
突然はやめて。
心臓に悪いから。
冷汗が背中を伝っていく。
雹が止んで澄んだ青空には似つかわしくない気分だ。
目の前で、真っ白な布にくるまれた赤ちゃんがすやすやと眠っている。
何故こんな所に赤ちゃんがいる? ここは人の家だ。正確には借りているのだが、そんなことはどうでも良い。
私は、赤ちゃんがこの世で最も苦手だ。
だから、突然出てくるのはやめてほしい。
とは言っても、相手は自力で動けない赤ちゃんである。自力で動けないとなれば、誰かが置いて行ったということになる。
私の部屋はアパートの一階だ。物干し場は小さなウッドデッキのような造りで、柵で囲われた外側は生け垣になっている。生け垣が少々邪魔だが、柵は低いので置いて行けないこともない。
捨て子だろうか?
とりあえず、警察に。
そう発したつもりであったが、唇が戦慄いて声にならなかった。
ようやく思考が回り始めたところで、ふと思う。
この子、いつから居たんだろう。
さっきまで雹が降っていたではないか。
まさか、その中に晒されていた?
「大変!」
何故もっと早く気付かなかったのだろう。
いくら軒下と言っても、雨や雹は物干し場まで降り込んでいた。
布の端を触ってみると、やはり少し湿っている。
赤ちゃんがこんな環境にいて平気な訳がない。部屋に入れてやらなくては。しかし。
触れない──!!
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