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「またやっちゃった」
わざわざ声に出してみる。
何しろ私は、上京してから幾度となく同じパターンで男にフラれているのだ。
その数、今回を入れて五回。ほぼ年一回のペースである。
「絵美。あんた、モテることは確かなのよ」
親友の麻由子は常々そう言う。
絵美、というのは私のことだ。二十九歳で、訳あって無職である。
そして麻由子は、いつも「でもねぇ」と付け加える。
拾ってくる男が微妙に残念なのだと。
「あんた、それなりに良い女なのにね」
麻由子曰く、私という女は──。
特別美人ではないが愛嬌はある。常識も一応あり、それなりに情もある。自分勝手な行動もしない。
ズボラで料理の腕がイマイチ、植物をすぐ枯らす等の残念な面もあるが、これくらいは許される範囲内。だそうだ。
別に腹は立たない。言いたいことを言うのはお互い様だ。
麻由子とは上京して以来の付き合いだが、さっぱりした性格なので付き合いやすい。
麻由子は首をひねる。あんたなら、幸せな結婚も夢ではないのにと。
そう言われましても。
こちらには、のっぴきならない事情があるのだ。
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