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これをやってしまうと、完全に切れることはなくとも男との関係は確実に悪化した。そして、大体別の女性と付き合うことになってお別れとなる。別れ際の言葉は、判で押したように毎回同じ。
「酷い女」
冒頭の男、杉野昌也ともほぼ同じパターンを辿った。
彼の場合、まだ付き合っている頃から新しい女の気配を隠そうともしなかった。
私がそれだけ「酷い女」だということか。
学生時代。
友人が出産した。授かり婚だった。
出産後ひと月と少し経った頃、他の友人と一緒に彼女宅を訪問した。
行き先が変わったことを、私は知らないまま。
分かり切った反応が出た。彼女たちは、私を非難し否定した。
その後、逃げるように上京。
単に環境を変えるという甘い解決策は、上京後すぐに挫かれた。
家庭とか子供とか。そういうことを考える年代に、とっくに入っているのだ。
取り残されてる。
分かってくれない。誰も。
ささくれ立った半年間を思い返す。
昌也と破局してからというもの、負の連続だ。
あの男と別れてから、仕事が手につかなくなった。放心状態だった私は、大人ではあり得ないミスを連発。大手食品メーカーとはいえ、派遣の立場は弱い。
上司は、ストレスのため後退した生え際をヒクつかせながら言った。お前の代わりは幾らでもいるのだと。
契約期間が満たされる前に、お払い箱となった。
真っ昼間に窓辺で無為な時間を大量消費できるのは、そのためである。
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