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私の体質を知っている麻由子は言う。
「またやったの? 馬鹿ねえ、あんたも」
「まだ二人きりがいいの、とか言っときゃいいのよ。上目遣いでさ」
「結婚したら気分も変わるんじゃない? 自分の子なら、きっと可愛いと思えるって」
麻由子とは、上京して初めての派遣先で一緒に仕事をして以来の付き合いだ。同い年で気も合った。
彼女は二十五歳の頃、いかにも尻に敷けそうな彼と早々にゴールイン。
すぐに子供が産まれた。現在、二児の母である。
今でも頼れる親友だ。しかし。
彼女は分かっていない。
あの沸々と込み上げる恐怖感は、抑え切れるようなものではないのだ。
三つ下に弟が産まれた時の衝撃は忘れられない。
母に言わせると、生まれたての弟を前にした私の泣き声は尋常でなかったとか。
弟が三つ下ということは、あの時、私は三歳。
記憶は朧げだが、あれがきっかけだったことは間違いない。
本気で医療に縋ろうかと思い続けてきた。
何しろ、「赤ちゃん」が話題に上っただけでパニックになるのだ。
しかし、頭がヤバい女扱いされることが恐ろしく、実践はしていない。
自分なりに分析してみると。
ベビー・アレルギー。
こんなところではないだろうか。
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