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この時代、結婚だけが全てじゃない。新しい趣味など開拓してみようと意気込んだ時期もある。しかし。
面倒くさかった。
アウトドアにDIY、カメラに手芸、ギターその他。友人に誘われて始めたどれもが長続きしなかった。
三十路を前にして何と味気ない生活だろう。
しかし、こういう性格なのだから仕方ない。
両親の心配そうな顔が、チラリと頭の隅をよぎった。
結婚しろとは言わない癖に、近所の誰それが結婚するとか、従妹に二人目が産まれるとか。そんな情報だけは、しっかり入れてくる。
あと数年もしたら、弟が先に結婚するのだろうか。
盆と正月、ファミリーで帰省なんてされたら。実家に戻ったって私の居場所は無い。
子供ができたらどうするんだ?
血を分けた甥か姪。可愛がりたい気持ちはある。しかし。
人間の場合、当然ながら草食動物のように生まれてすぐ立ち上がるわけではない。ベビーの状態で産まれてくるのだ。
冗談じゃない。
何故、実家に帰ってまでアレルギーに苦しまねばならん……!?
再び、空がカッと光った。
それから、バチバチと煩い音が響く。雹だった。
小ぶりな粒が、向かいの家の屋根や道路に次々とぶつかっていく。
このまま全部、消してくれたら良いのにな。
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