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"結ちゃん" が "結”になって、
"凌二さん" が "凌二” になって。
私は社会人になって、凌二も仕事が忙しくなって。いつの間にか紘二といた時間より、凌二と過ごした時間が長くなっていた。
二人で色々なところに出かけ思い出を積み重ね、たまにケンカもするけど先に謝ってくれるのは凌二で。いつも「ありがとう」って言葉で伝えてくれて。疲れた時はその言葉と笑顔に癒されて。
凌二のそばにいられて幸せ。そう思うよ。あなたと幸せになりたいって。
思い返せばあの日、朝からソワソワしてたよね。
行きたいところがあるからって午前中に迎えに来てくれて、『何するの?』って聞いても「内緒~」って。でも、した事といえば普段と変わらなくて。
夕方になれば、二人のお気に入りの場所に腰掛けて夕陽を眺める。オレンジ色に輝く太陽は、いつもと変わらず空も海も紅く染めていく。
隣には今年も凌二がいる。
何でだろう、紘二との思い出が蘇る。出会いから、別れまで。それはきっと今日が命日だから。
凌二がいるから笑っていられる。あなたの存在の大きさを改めて感じたよ。
「…結」
『なぁに?』
隣から聞こえる深呼吸。
「…結婚、しよっか。…いや、俺と結婚して下さい」
律儀に言い直したりして。
「…泣くなよぉ」
私を抱きしめる腕はどこまでも優しい。
「返事は?」
もぅ、頷くのが精一杯。そんな私をまたあなたはぎゅうっと抱きしめる。
「幸せにするから絶対。結、ありがとう」
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