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『甲斐くん、私ね凌二と結婚する』
「おめでとっ。ほんと良かった、結も凌二も」
甲斐くんは "俺の苦労も報われるーー" って伸びをする。なぁに、それ。どういう事?
私の質問に "マズイッ" って顔をして。俺のことだから、といくら待っても言わないから私の話を。
「この間の紘二の命日ね、朝早くにお墓参りに行ってきたの。そしたらね、誰かが来たあとでお花もお線香も添えてあった。覚えててくれた人がいて、嬉しかったな」
お花のチョイス的に家族じゃないと思った。やけに豪華だったし。
そう、あの日。凌二からプロポーズされた日は、紘二の命日だった。きっと凌二は覚えてないと思ったから、敢えて何も言わず、待ち合わせの前に一人お墓まいりに行ってきた。
それなのに、甲斐くんは驚きの事実を私に話す。
「それ、凌二だよ」
黙ってろ、と言われてたみたいだけど、甲斐くんは「まいっか」とその日のことを "俺の苦労" として話してくれた。
結にプロポーズする前に行きたいところがあるから付き合ってくれって。俺の決意を聞いておいてくれって。
早朝も早朝。叩き起こされて連れて行かれた場所は、紘二の墓前。そこで手を合わせ、今日プロポーズすること、本当は紘二がしたかったことを自分がしてしまうことへの詫び、その後に
「絶対に彼女を幸せにするから」
力強く言ってたって。甲斐くんはそれの見届け人だったんだって。
「凌二さ、いい顔してたよ」
"やべぇ~、キンチョーする~" って情けない声も出してたみたいだけど。
11月10日を選んだのは凌二のこだわり。偶然なんかじゃない。悲しい日になってしまった11月10日を、スタートにしてやりたいって。思い出した時、悲しむんじゃなくて幸せな気持ちになって欲しいって。
たくさんの愛をもらったね。私は少しでもあげられてる?凌二に逢えて、本当に良かった。
あなたが…好き。あなただけが…好き。
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