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紘二と同じ誕生日だったと言い出せず、何回か遊んで、11月10日の命日は誘いを断って。
一人で行った墓前で凌二さんのことを話してみたり。似てる名前に思わず言い間違えて苦笑して。
いつの間にか、私の生活の中に凌二さんが増えていく。
それから数日後、凌二さんのお気に入りの場所に連れてきてもらった。そこは、私と紘二の思い出の場所"七里ガ浜海岸駐車場"。この一年、寂しくなったら一人で来てた場所。
駐車場内にあるカフェでホットコーヒーをテイクアウトして、座り慣れた壁に二人並んで腰掛ける。今日は一段と綺麗なサンセット。
「やばい!今日ちょー綺麗じゃん」
あなたは無邪気に笑って。誰かと一緒に見るともっと特別なものになる。そんな気持ちを思い出したよ。
晩秋の日暮れは肌寒い。コーヒーを両手で包んで、しばらく燃ゆる夕陽を楽しんだ。
隣を見れば遠くを見つめる凌二さんがいて。何を考えているの?
「…結ちゃん」
『なぁに?』
「俺と付き合ってよ」
凌二さんのことは好き。あなたの笑顔は私を元気にするから。でも、私を止めるのは"罪悪感"。
私だけ幸せになってもいいの?紘二はもういないのに。
「何がネック?」
『だって……まだ一年だよ?』
「 "まだ" じゃない、 "もう" だよ。そんなこと言ったら俺はどうすんだよ」
『………』
「好きなもんは好きなんだよ、期間じゃない。それに…俺は結ちゃんを幸せにしてやれる自信があるよ」
そんなキザなことを言うくせに、照れ隠しなのか、「眩しいなぁ」とか言ってサングラスを掛けたりして。その横顔を見て時が止まった。だって、あの時私の隣で涙を流していたひとそのものだったから。
凌二さんは、誕生日にケジメをつけたって言ってたね。
『もしかして誕生日、ここにいた?』
「えっ、何で?!」
『私もいたの……隣に』
実は紘二と同じ誕生日だと、初めて明かした。
ねぇ、これってやっぱり運命?
「……隣に一人でいた子?」
『そう、それ私』
「すげぇな……もうさ、運命だと思わない?」
『うん』
あなたのケジメの日に一緒にいられたんだね。
「…返事は?」
凌二さんのサングラスを外して、しっかり瞳を見つめて。
『凌二さんのことが、好き』
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