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言えなかった。凌二さんと付き合うことにしたって。同じ経験をして、名前が似ていて、年こそ違うけど同じ誕生日のひと。キズを舐めあっているって思われるのが怖かったから。
それに、"もう次の男?" そう思われるのも。
泣きながら友人に伝えれば「良かったね、ずっと心配してた」って。凌二さんを紹介すれば「いい人そうで安心した」って。
少し心が軽くなった。でも、どこかで引っかかってた。私は……梨江先輩の代わり?
些細な事でケンカした時、思わず口走ってしまった『どうせ私は由梨江先輩の代わりなんでしょっ!』って言葉。あの時、本気で怒られたっけ。
"梨江の代わりなんかじゃねぇ。俺は目の前にいる結が一番大切なんだよ!"
でも、怒った後に「そんな風に思わせた俺がいけない」なんて男前なこと言っちゃって。
こんな事もあったよね。酔っ払って凌二さんに抱きつきながら何も考えずに口から出た言葉。
『紘二に逢いたい』
その言葉を聞いたあなたはひどく傷付いた顔してた。それなのに、私のことを優しく抱きしめて「分かるよ、」って。
"亡くなったひとには勝てない。でも俺は、負けないぐらい結を想ってる"
いつだってそうだった。
初めてキスした時も、初めて身体を重ねた時も、いつも私を気遣いながら大きな愛で包んでくれたね。ずっと気を付けていたのに、名前を言い間違えてしまった私に笑顔を向けてくれて。
「気にすることじゃない」
でも知ってる。後日、甲斐くんにめっちゃ愚痴ってたって。
梨江先輩の命日にはお墓に連れていってくれて。
手を合わせてあなたは言った。
「結に逢わせてくれて、ありがとう」
その優しさに、涙が止まらなかった。
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