一杯目   聖ルチアでお茶を

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 そうアドバイスしてくれたのは、年下のエマ。彼女は私よりも数個年下だが、かなりのお茶マニアで勤務歴も長い。  エマは髪がくるくるで緑色の虹彩を持っている。華奢で人懐っこく、お客さんとの距離も近い。客にお茶を語る彼女はいつも楽しそうで、客もすすめられるがまま喜んでいろんなお茶を買っていく。エマは根っからのパリジェンヌで、フランス以外の国に住んだことがない。大のアニメ好きで、日本に行くことが夢だと語っていた。 「そうなの?通りで最近寝つきが悪いと思ったら、紅茶のせいだったのか」  お茶屋さんで働き始めてから、寝つきが浅くなったことに気づいていた。疲れているはずなのによく眠れない。私はてっきりストレスのせいだと思った。 「結月、ハーブティー以外、全部カフェイン入ってるから気を付けて。紅茶が一番多いよ。緑茶、ほうじ茶の順に少なくなるけど、気になるならデカフェのお茶もしくはハーブティーがいいよ」  さすがお茶マニア様、お詳しい。この日以来、私はお茶をがぶ飲みすることを辞めた。朝だけ紅茶か緑茶を一杯飲み、午後からはハーブティーを飲むようにした。  お茶カウンターでお茶サンプルの匂いをチェックしていると、ぽっこりお腹の中年おじさんが店に入ってきた。ワインレッドのズボンに白いワイシャツ、サングラスをかけていたおじさまは、どこかの俳優さんと思わせるオーラを放っていた。 「素敵なお店だね。緑茶で何かおすすめありますか。できればデトックス効果のあるもので」  おじさまはぽっこりお腹をポンと叩いて、にこやかな笑顔でそう聞いた。緑茶でデトックス、この国ではなぜかそう思っている人が多い。日本の緑茶は、フランスではデトックス効果があると信じられていて、緑茶を求める健康マニアが後を絶たない。 「わかりました。緑茶は飲んだことありますか?」  健康マニアの中で、緑茶に飲み慣れていない人も多い。
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