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彼女が家にやってきてから、早一年。
まるで生活能力のない僕に代わって、彼女がせかせかと世話を焼いてくれている。
思えば衝撃的な出会いだった。
一年前の冬、雪がこんこんと降った日。
ピンポーンとインターホンが鳴って、玄関に向かったら。
「こんにちは! 天使です!」
長い金髪に青い目、白のワンピース一枚の少女が立っていた。
「……お帰り下さい」
僕は怪しい人間に構ってやるほど暇ではない。
「そんなこと言わずに! ほら、ちゃんと天使ですから!」
そう言って彼女は背中の羽をパタパタと動かして見せた。
「すごい技術ですね。興味ないんで、帰ってください」
「ええ?! って言うか寒いので中に入れて」
「変人を家に招く趣味はないので」
「そんな殺生な! 何でもしますから、お願い、いーれーてー!」
その後もわめく彼女とすったもんだした挙句、隣の住人から苦情が来たので、仕方なく入れてやったら、あっという間に住み着いたのだ。
それからもう季節が一周しようというのだから、時がたつのは早いものだ。
「ねえ、お汁粉作ったから食べようよ」
当の本人は完全にくつろいで、我が物顔で過ごしている。
「はいはい」
結果論だけど、こんな生活も悪くない。
僕は最近そう思い始めていた。
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