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そんな折、夢を見た。
何故夢だと分かったかというと、現実ではありえない光景だったからだ。
僕は真っ白な空間に立っていた。
頭の上高くには、キラキラと輝く門のようなものが浮いている。
何だ、これは。
僕が混乱していると、くいっと服の袖を掴まれる感覚がした。
そちらをを振り向くと、天使が立っている。
『行かなきゃ』
寂しげに微笑みながら、彼女は言った。
『もう少しだけ、ほんの少しでも居たかったけれど』
妙にエコーのかかった声で彼女が話す。
『ああ、君が大好きなのに。好きで好きでたまらなくて、何もかも投げ出してきたのに。もう時間切れ』
「行かなきゃってどこに」
彼女は僕の上の門を指さした。
「は?」
さらに混乱の深まった僕をよそに、彼女は上を見上げると、パタパタと羽ばたく。
次の瞬間、翼がぶわりと大きくなった。
いや、大きくなっただけじゃない。三対に増えている。
そのまま一直線に門へと飛んでいく。
「お……おい!」
僕が止める間もなく、彼女は門の向こうへと消えていった。
バタンと門が閉まった。
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