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家に入れると、彼女は「はー、やれやれ」と勝手知ったるなんとやら。
中を歩き回ってはあちこちで「またカップ麺ばっかり!」「この間片付けたばっかりなのにー!」と悲鳴を上げている。
挙句の果てには棚の上を見て、
「何これ! 勝手に人を殺さないでよね!」
とプリプリ怒りだした。
でも、僕はそんなことどうでもよかった。
「どこ、行ってたんだよ」
「んー? 実家?」
どこだよ、天国か?
「何しに」
「家出がバレたから、怒られに」
「もう少しだけって」
「あー、朝だから君を起こさないといけないのに、実家から早く早くってせっつかれちゃって。時間なくなっちゃったんだよね」
「……紛らわしいんだよお!!」
僕は手近にあったクッションを彼女に投げた。
「わっ」
驚いた彼女が尻もちをついた。
「なんだよ……なんだよ、もう!」
僕は自棄になっていたのかもしれない。
「急に出て行ったと思ったら、三日も帰って来ないし、僕が、僕がどんな気持ちでいたと……!」
どさりと膝をついた僕に、彼女はとことこと近づいてきた。
「……寂しかった?」
「……うん」
「私がいなくて?」
「うん」
「これからはずっと一緒にいてくれる?」
「うん……!」
ぽたぽたと僕の涙がカーペットに染みを作る。
彼女はずっと、僕の頭を撫でてあやしていた。
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