翼が欲しかった少女の物語

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無難にブレンドコーヒーを注文して、自分なりにまったりした時間(心の眼は久我さん一直線だったけど)を過ごし、夢見心地でお店を後にした時、それは起きた。 「礼儀知らず、って言われないっ!?」 物凄く怒っている叫び声が近くの路地から響いてきたのだ。 (え、何?) 反射的に手近な塀に身を寄せて奥を窺うと、そこには三人の女性がいた。 「大体さぁ、コーヒー一杯で三時間以上粘るなんて、お店からしたらいい迷惑じゃんっ!!」 「しかも、いつもあんた最初のひと口しか飲まないしっ!! 淹れた人に失礼だと思わないのっ!!」 怒っているのは先ほど見た女性達で、相手はグレーのパーカのトップスに、ロング丈の黒のタイトスカートの若い女性だった。 (組み合わせとしては悪くないんだけど。何か違う) 本人が俯いてるせいか、地味な印象を与える。 「どうせあんたも久我さん目当てなんでしょっ!! だったらせめてルール位守りなさいよねっ!!」 (ルール?) 相手の女性も疑問に思ったのか、 「ルールって何ですか?」 小さい声がした。 「あのねぇ、喫茶店の経営って結構大変なのよ。回転率悪くてもいけないし」 「そうそう。それに久我さんはかなりのイケメンだから、勝手に勘違いして付きまとってくるバカが多くてね。分かると思うけど、店内で久我さん撮るの禁止だから」
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